ルメ映画たち:豪華4本フルコース
「食」は大切な文化の一つ。私達日本人にとっても歴史ある文化の一つである。しかし、世界には私達と同じく、食文化を大切にする国々がある。今回はその中でもフランス、台湾、デンマーク、そしてアメリカといった異色の国々からのディッシュをご紹介しよう。それはまずフランス。グルメな人々の目をよろこばせる素材とソースで描かれるアートがたまらない。題して前菜アラカルト「パリのレストラン」。お次は台湾。中華ならではの素材を贅沢に活かしたコクのある味を楽しませてくれる。素材には芯まで熱を通すのが基本!?芯まですっかり暖まったアツアツのメインは「恋人たちの食卓」飲茶風。そして最後はデンマーク。食にはそれほどうるさくないと思われるデンマークだが、食が教えてくれる本当の意味での幸せを味わわせてくれる極上の一品。メインでお腹いっぱいになった後で、ほっと一息させてくれるデンマーク風デザート「バベットの晩餐会」。さらに、このデザートに必需品とも言える隠し味のソースは、アメリカから「リストランテの夜」で決まり!以上、あなたのお口には合いますか?(*^^*)

前菜:パリのレストラン
Au petit Marquery 雪がちらちらと降る夕食時、パリのある一軒のレストランに人々が集まる。今日は30年続いたパリのレストラン「プチ・マルグリィ」最後の日。そうとは知らず、お客サンがいつものようにやってくる。この日が最後というのを察した主人公であるシェフの息子を中心に、次々とこのレストランに関わってきた人々が集まり、彼等の回想シーンと共に最後の晩餐が行われる。次々と運ばれてくる豪華なコースと、フランス映画ならではの人間描写、そしてシェフと集まった人々の思い出などをフィードバックさせながら物語りは進んで行く。前菜からメイン、そしてデザートまでたっぷりと料理を見せてくれるところがうれしい。料理の楽しさ、人とふれあうことのすばらしさ、恋する切なさ、愛する大切さなど、いろいろな感情が絡み合った作品。一般的なフランス映画とも捕らえられるが、私には、食と絡めた奥の深い作品に思える。まさにアラカルト。原題「Au petit Marguery」1996年作品。フランス。監督:ローラン・べネギ 脚本:ローラン・ベネギ/ミシェル・フィルド/オリビエ・ダニエル 出演:ステファーヌ・オードラン/ミシェル・オーモン/ジャック・ガンブラン他

メイン:恋人たちの食卓
飲食男女 どこか懐かしく感じる。どこか親近感を感じる。そんな不思議な力を持った映画に出会ったことはあるだろうか?まさにこの映画がそれにあたる。そもそもアジア映画自体がすごく身近に感じることが出来るのは、日本の古き良き時代、情緒あふれる人間模様が描かれた作品が多いからではないだろうか。メインとして用意したこの「恋人たちの食卓」は、メインにふさわしいほどたっぷりとした、コクのある感情を与えてくれる。映画がスタートしてから、いきなり中華のフルコースが登場する。この段階でこの映画のとりこになること間違いなし!冒頭からぐいぐいと魅力を全開させるところがアン・リーのすばらしいテクニックの一つ。3人の姉妹と愛妻に先立たれ、娘達とコミュニケーションを図ろうと四苦八苦する父親。4人の微妙な関係を、食卓を囲みながら描いている。3人の多用な恋愛模様(特に長女がいい!)と、料理長として長年養ってきた自分の味覚が失われようとしている不安を感じて生きている父親。恋愛映画のように見えるが、「食」と「恋愛」という人間には切っても切り離せない欲望をうまく並行させて描いているのが魅力的。そして一番気に入っているのがラストシーン。見つめ合う父と娘の間に生まれた不思議な感情。とにかくお腹がいっぱいになる料理の数々、そして恋愛、感情。メインディッシュとして十分に満足できる一品。それにしても、台湾でさえこれだけの感情を表現できるのに、日本での日常生活ではかなり感情を押し殺しているのではないだろうか?もっと自由に生きてみたいと感じさせてくれる作品。1度食すことをオススメ!原題「飲食男女/Eat Drink Man Woman」1994年作品。台湾。監督/脚本:アン・リー 出演:ラン・シャン/ヤン・クイメイ/ウー・チェンリン/ワン・ユーウェン/ウインストン・チャオ他

デザート:バベットの晩餐会
Babette's Feast デザートにはあっさりとした、ほのかに甘いものを食べたいところ。甘すぎず、またすっぱすぎないこの作品は、傑作と言える。宗教的な色も見え隠れするこの作品だが、最初はある教会を舞台にお話がスタートする。教会の牧師さんの2人のきれいな娘さんが主人公で、若いころは彼女達を目当てにやってくる人も大勢いた。月日は流れ、彼女達もそこそこの年齢になったある日。フランス革命から逃れてきた一人の女性、バベットが突然2人を訪れた。そしてひょんなことから彼女を家政婦として雇うことになったのだ。彼女達の収入は細かったが、家政婦バベットはなかなかやりくりが上手で、2人もびっくりするほど。そんなある日、宝くじで当選した大金を使って、牧師さんの誕生日会にフランス料理をごちそうするとバベットはいい、さっそく準備にとりかかるが・・・。料理のシーンも確かにあるが、それ以上に魅力的なのが、食事中の村の人々の表情。不思議なもので、いままで食べたことのない食材、そして料理を目にし、実際に一口口の中にいれるだけで広がる「幸せ」の味が、彼等の顔の表情から感じ取ることができる。後半から急にグルメ映画に大変身?と思いきや、やはり主人公はあくまでも人間というところがうれしい。原題「Babette's Feast」1987年作品。デンマーク。監督:ガブリエル・アクセル 出演:ステファーノ・オードラン/ジャン・フィリップ・ラフォン他

隠し味:リストランテの夜
Big Night "Big Night"。味は確かだが、なぜかお客が来ない兄弟で開いたイタリアンレストラン。そんなレストランが、生き残りを賭けて、最後の賭けにでた!ストレートに人間の素直な感情を描写した「バベットの晩餐会」の隠し味として最適なのが、この「リストランテの夜」。イタリアンレストランが舞台となっているが、映画自体はアメリカで製作され、いかにもアメリカらしいストーリーが展開されていく。が、描写はいたって控えめ。控えめな演出は、まさに甘さを抑えた絶妙のソース!主人公を演じる2人の兄弟が、衝突し合いながらもお互いの存在の大きさを感じ、そして新たに道を切り開いていく。弟のうわき騒動など、ちょっと浮いた話題も盛り込みながら、料理のシーンはたっぷりと見せている。そしてクライマックスまでの豪華な料理の数々。。。原題である"Big Night"はまさにふさわしく、ストーリーと非常にマッチしたタイトルとなっている。ぴりっと刺激的な味をお求めの方には、この隠し味をオススメ!原題「Big Night」1996年作品。アメリカ。監督:キャンベル・スコット/スタンレー・テュッチ 主演:スタンレー・テュッチ/トニー・シャルーブ/イザべラ・ロッセリーニ/イアン・ホルム/ミミ・ドライバー他