みのテクニック:Tricky Masters
狙った獲物は逃すことなく盗み出す。そんな世界屈指の強盗たちが披露する盗みのテクニックは意外とシンプルだったりする。今回は各国で活躍する強盗たちのシンプルかつスマート(本当か?)なケースを事件簿からご紹介しよう。事件簿1は「ホットロック」。天才ドートマンダーが仲間と高価なエメラルドを盗み出す。しかし強盗には相棒選びが命取りに・・・。あっさりと盗みを働く予定が、相棒選びに失敗したらしく、何度となく失敗を繰り返す。このケースの教訓は「最後まであきらめるな!」。事件簿2は「トプカピ」。こちらも相棒選びに失敗した例。イスタンブール宮殿からお宝を盗み出そうとするが、集めた相棒たちはみんなアマチュア。アマチュアたちが考えた盗みのテクニックとは・・・。事件簿3は「盗聴作戦」。こちらはプロを相棒に選んだまではいいのだが、逆にそれが目立ってしまった例である。事件簿4は一番すばらしいテクニックを披露してくれた「大列車強盗」。最後の最後までテクニックを見せてくれる。チームワークも抜群だ。さて、4つの事件簿、彼らのすばらしき盗みのテクニックをたっぷりとご覧あれ。

事件簿1:ホットロック
ターゲット:高価なエメラルド

出所したばかりのドートマンダーの元へやってきた相棒は、さっそく新しい仕事の話を持ち掛ける。ボストンのコロシアムに展示されている高価な宝石を盗むというのだ。相棒も選び出し、さっそく盗みへと取りかかった。しかしなんと、彼が選んだ相棒はまともな人間ではなかった!?さまざまなトラブルに巻き込まれ、美術館から盗みだすはずの宝石を追って、刑務所、警察、そして銀行と盗みに入る。それにしても警察まで盗みに入るとは笑えるところだ。どうやって入るかは見てのお楽しみなのだが・・・。この事件簿をチェックすると、相棒の選び方がどれだけ大切かが身にしみてわかる。特に友人を相棒として選ぶにはリスクが伴う。色目を使わずに友人を評価するのは非常に難しいところ。しかし信頼できるのも友人のみ。最終的にミッションが成功するかしないかは別として、やはり盗みをするならスムーズに行いたいものだ。(笑) 原題「The Hot Rock」1972年作品。アメリカ。監督:ピーター・イェーツ 音楽:クインシー・ジョーンズ 出演:ロバート・レッドフォード/ジョージ・シーゲル/ロン・リブマン/ポール・サンド他


事件簿2:トプカピ
ターゲット:スルタンの宝剣

イスタンブールのトプカピ宮殿内博物館。女強盗エリザベスは、ここに飾られているエメラルドやダイヤがちりばめたスルタンの宝剣を盗み出そうと企む。そこで相棒に選んだのは元恋人のウォルター。エリザベスの師匠であり相棒であるウォルターが選んだ相棒たちとは、なんとみんなアマチュア!セドリック、ジュリオ、フィッシャー、そして思いもよらないところから強盗チーム参加となってしまったシンプソン。アマチュアが繰り広げる盗みのテクニック、そして事件の「オチ」はなんとも粋である。注目すべきところは、なんといっても盗みのシーン。これだけ原始的な映像で、はらはらドキドキさせられる映画は滅多にない。M:Iをも超える盗みのテクニックはまさに国宝級!?さらにトルコロケということで、エキゾチックなシーンがちりばめられている。強盗もの映画としてはかなり楽しめる作品となっている。エリック・アンプラーの「真昼の翳」が原作となっており、ちょっぴり間抜けなシンプソンを演じたピーター・ユチノフスは1964年アカデミー賞助演男優賞に輝いている。ちなみにウォルターが定義する泥棒基本3ヶ条とは!1.計画は細心に 2.実行は正確に 3.実行前も途中も後でも捕まるな!原題「Topkapi」1964年作品。アメリカ。監督:ジュールス・ダッシン 出演:メリナ・メルクーリ/マクシミリアン・シェル/ピーター・ユチノフス他


事件簿3:盗聴作戦
ターゲット:豪華なマンションまるごと!

事件簿3。こちらはかなりの難関。豪華なマンションをまるごと盗んでしまおうという発想はなかなかのもの。さすがは出所した後も政府に盗聴される主人公だけある。盗聴の意味はよくわからないが、この映画は冒頭から有名人がこぞって登場している。まずは主人公コネリー演じる金庫破りの恋人。なにやら聞いたことのある声だと思いきや、「アリーmyラブ」のウィッパー。そう、今となっては裁判長。ずいぶんと出世したものである。更に被害者の一人をよく見てみると、「アーノルド坊やは人気者」で人気者となったお金持ちのドラモンドさんではないか!やはり昔からお金持ちだったらしく、この時代から高級マンションに住んでいた。そして何といってもコネリーの相棒の一人にはキッド、ことクリストファー・ウォーケンがいるではないか!そう、この事件は彼のデビューでもあるのだ。普通に演じているつもりなのだろうが、やはりどことなくクレイジーな気配を当時からにおわせている。なんとも味の濃い作品であり、さらにクインシー・ジョーンズの音楽がそれを盛り上げている。しかしタイトルにもなっている「盗聴」自体はよくわからずじまいなのが残念。この映画の教訓は「引き際が大切」といったところだろうか。原題「The Anderson Tapes」1970年作品。アメリカ。監督:シドニー・ルメット 音楽:クインシー・ジョーンズ 出演:ショーン・コネリー/ダイアン・キャノン/マーティン・バルサム/クリストファー・ウォーケン他


事件簿4:大列車強盗
ターゲット:クリミア戦争の軍資金

舞台は19世紀のイギリス。クリミア戦争の軍資金として、月に一度ロンドンからフランスに輸送される金塊列車を襲う。こちらもまた豪快なアイディア。テクニックの方もなかなかのものなので楽しませてもらえる。盗みの張本人であるコネリーは綿密にシナリオを描く。そして役者のようにそれぞれの役割を果たすべく、チームメンバーであるサザーランドやアン・ダウンがさまざまなテクニックを披露している。特にサザーランドは合鍵を作るなど、粋なキャラクター。コネリーに対してちょっぴり敵対心を抱いているらしく、ちょっと癪に障ることをいわれると向きになる体質が面白い。しかしこれら個人のパーソナリティさえも主人公はすでに計算済みなのだ。映画が進むにつれて盛り上がり、そしてラストへと突入。ラストで一言、コネリーが本音を言うところはなんとも笑える。そしてクライマックスに・・・。この4つの事件のうち、フィナーレを飾るにふさわしい、すばらしいテクニックを披露してくれたこの作品。さて、最後はお宝を手に出来るのか!?原題「The First Great Train Robbery」1979年作品。アメリカ。監督:マイケル・クライトン 出演:ショーン・コネリー/ドナルド・サザーランド/レスリー・アン・ダウン/アラン・ウェブ他